夢
夢を見た。嫌な夢だ。夢の中で嫌だと思う気持ちが高ぶって起きた。泣いた。なぜ日曜日の朝早くこんな嫌な気持ちで泣いて起きなければならないのか。
見知らぬ男性と恋愛関係にあって、電車で旅の途中のようだった。金髪で長い髪(ローランドのような)。服はストリート系でバンドマンっぽい感じ。この時点で私の好みではないのだが(黒髪短髪きれい目が正義)、どうやら夢の中の私は好きなようだ(もしかすると、女の子扱いしてくれる人を求めているだけなのかもしれない)。
私の腕に内出血の跡があるのを彼は見つけた(季節は夏のようだ)。彼はそれに手を触れながら言った。
「こんなことしちゃだめだよ。」
私は何のことか一瞬戸惑い、考えを巡らせた。どうやら彼はただ荷物を持った時についた跡を自傷行為の跡だと誤解しているようだ。(実際私は皮膚が薄いのか重い荷物を持った後はしばしば内出血してしまう。)
「荷物の跡だって。」
私は答えた。でも彼は納得していないようだ。
「ずっとリュックなんだから、腕に重い物なんて持ってないでしょ。」
でも恐らく、お土産の紙袋を持った時にできた跡なのではないかと私は考えていた。それを主張したが、
「そんなのでこんなになるわけがないじゃん。」
と、怒ってしまった。怒った彼は私たちが立っていたドアの前の床に荷物を置いたまま、一つだけ空いた席に座りに行ってしまった。
確か、まず私はここで嫌な気持ちになった。勝手に決めつけて勝手に怒って、一人だけしかも荷物を置きっぱなしで座るなんてありえない。それと同時に、些細なことまで気にかけてくれた嬉しさを感じている自分にも嫌気が差した。
しばらくして、彼が座っている席とはまた別のところが空いた。彼の分の荷物も持って私はそこに腰を下ろした。詰めれば3人が座れるような席で、私しか座っていないのに、彼は来ない。寂しいし悲しい。
次の駅で酔っぱらいのような初老の男性が隣りに座ってきた。しばらくして私に絡んできた。なんだか訳のわからないことをずっと私に話してくるが、終始無視をしていた。終いには私の身体に触れてきた。この男性にも勿論腹が立つが、その状況がわかっているはずなのに知らん顔でいる彼に対しても腹が立った。悲しかった。
幸いにもその面倒臭い男性は次の駅で降りていった。しばらくして彼がやっと隣りに移動してきた。
「寝ちゃってた~」
彼は私の隣が空いていたことも、男性に絡まれていたことも知らなかったようだった。知っていて寝たふりをしたのかもしれないが。今までのことが何も無かったかのように私の顔を見つめ、身体を近づけてくる彼。悲しいし腹が立つのに、そうしてくれるのが嬉しかった。しばらくは恋人同士らしく、車窓を撮って盛り上がっていた。ひとしきり写真を撮り終えたので、私がゲームしよう、とニンテンドーSwitchだかスマホだかのゲームを提案したところ、急に彼は白けて、
「眠くなっちゃった。あと着くまで20分だし寝かせて」
と言って眠ってしまった。さっきも寝てたのではないのか。車窓の綺麗な夕焼けを見ながら私はいつもこうだ、と思って悲しくなった。
で、目覚めた。涙が溢れてきた。夢の中の出来事にも、日曜日の早朝からこんな気持ちになって泣いていることにも、それを慰めてくれる人がいないことにも、この世の全てに悲しくなって声を出して泣いた。
まさしくあの夢は私の恋愛の仕方、人との関わり方だった。思っていることがあるのに言えない。細かいことまで気にしすぎているのは私だけだと知っているから。友人や恋愛関係になりそうな人にこうしてほしいと何度か言ったこともあるが、拒絶されてしまった。無理だと。だから嫌なことを平然とされ、それを黙って我慢するしかない。やっている側は悪気はないのだ。無意識だ。でもいつか我慢は限界が来る。結果として黙ってその人と関わるのをやめる。だから人付き合いがかなり制限され、恋愛も上手くいかない。わかっているけど、夢の中でまでそれを直視させられるのは非常に辛い。
書いている途中もまた泣いた。こうも一日中内省的になり感情に振り回されるのは非常に辛い。だから何も予定がなく家に引きこもっていることが苦手だ。嫌でも考えすぎてしまう。だからと言って無理に出かけても疲れてしまう。オミクロンが流行っているし。
私の命を差し出して、受験生全員合格するならそれでいいのに、と思う。会社のためという考えはこれっぽっちもないが、あの子たちの頑張りは報われてほしい。明日の検査結果が悪ければいいのに。それで彼らの合格と引き換えになるなら。「はさみで人は死ねるのか」と検索してしまうような人間の命など差し出して、未来ある純粋で穢れなき若者に未来を託したい。あと何回頭の中で自分を殺すのか?
そんなことを考えながら、ああ日が暮れる前にランニングに行かなくては、と考えている。そんな自分が滑稽で腹が立つ。走りながら死んでしまえばいいのに。でも死なない。それが人生だ。