引き金

本を読んだ。1ヶ月ほど前に妹から「本にはストレス解消作用がある」と聞いて、ネットを調べてみた。すると確かにあるようだ。「コーヒーブレイクよりもずっとストレス解消に良い」。それから、積極的に本を読むようになった。中高生の頃は通学電車の中でよく読んだものだが、スマホの普及とともにネットサーフィンの癖がついてしまい、さらに本を持ち歩くのが億劫になって、読む量は減った。それでも、たまに本屋に足を運び、話題作のチェックは欠かしていなかった。文庫本1冊なんて昔はすぐ読み終わったものだが、最近は読み終わることの方が稀だ。1冊読み終わるまでに飽きてしまう。長い文章を連続して読む我慢強さが無くなってしまったのだろうか。ところが、今日は残り半分ほどの文庫本を1時間ですっかり読み終えてしまった。最近は、寝る前にYouTubeでくだらない動画を見ることが習慣付いていたが、今日はどうも無理だった。どのおすすめ動画にもそそられない。むしろ、私を攻撃してくるように感じた。ここのところ半月ほど大波にさらわれてしまっている。今回は割と長い波だ。生理が終わって落ち着くと思ったけれど、そうはいかなかった。数ヶ月前までは、昼のワイドショーを見るのが好きだったが、最近はひどい時は5分も見ることができない。嫌な気持ちになる。自分の中の嫌なエピソードと関連づけて考えてしまう。過敏になっている。いよいよYouTubeも見られなくなったか。そんなわけで、今夜は本を読むことにしたのだ。本を読んでいても辛いことはある。ワイドショーやYouTubeを見ている時と同じように。だけれども、本は本だ。フィクションだ。だからまだ耐えられる。あとは、続きが気になるし、買ったからには読まなくては、という義務感で一気に読み進めることができた。話題になっていた作品だったが、あまり好きな話ではなかった。暗い話だ。読んでいる最中も、涙が止まらなかった。読み終えてからもっと泣いた。最近、映画やドラマ、本などで心が刺激されると、その後もしばらく過敏になってしまうようになった。引き金を引いてしまう。雪崩のように心が崩れる。映画も美術館も博物館も、行くのは好きだけど、もう他人とは行けないな、思う。作品を鑑賞するのと、他人を気にかけるのは同時にはできない。押し寄せる波を乗り切るのに精一杯だ。感想を言い合うなんて、できない。言語化することなんて、できない。